陳氏太極拳協会主席からのご挨拶
陳氏太極拳協会のホームページを訪れていただき、感謝いたします。
太極拳は私の先祖である陳氏第九代の陳王庭によって創出されました。陳王庭は生涯を武将として戦いに明け暮れた後に、故郷である陳家溝に隠居して、哲学思想や中国医学理論、並びにそれまでの家伝の拳法を基にして、太極拳の原型(一路、および二路)を創り出しました。そして時を重ねるに従い、源流である陳氏太極拳から様々な流派が現れました。現在、世界には数多くの流派があります。これらの流派において「太極拳」とは、何を以って太極拳なのでしょう。太極拳と聞いて皆様は何を思われますか?
私は、太極拳は単なる身体の運動ではなく、文化、武術、芸術、養生理論が一体化したものであると考えています。また太極拳は身体を使って表現する「哲学」と捉えることも出来ます。
たとえば、太極拳の姿勢、動き、技法、原理などの隅々にまでわたって、「陰陽」や「太極」といった哲学理論が表されています。円形の動作や螺旋の運動を使うことや、「柔」を用いて「剛」に勝つことなど数多くの興味深い理論が含まれています。
多くの太極拳愛好者は、健康効果あるいは理論研究を目的として太極拳に取り組んだり、競技試合でメダルを獲得することを目標に努力を積み重ねたりしておられるようです。
しかし太極拳の本来の動きは、身体の深い内部から外へ流れてくるものであって、内臓の運動や気の運行が重要です。すなわち外観からだけでは計れない運動要素が含まれており、経絡などの中国医学理論と深く関わるものです。このような理論や文化に触れると太極拳に対する認識も深まるでしょう。
健康のために太極拳を始めた方々は武術としての太極拳にそれほど興味がないかも知れません。しかし、せっかく太極拳を練習しているにも係わらず攻防技法を練習しないのは極めてもったいないことです。何故なら攻防技法を練習するかしないかで心身の健康効果に大きな差が生じるからです。攻防技法には様々な興味深い理論があり、それらの中には皆さんの社会活動や生活にも活用出来るものが多く含まれています。太極拳の身体の動きの中に、また理論の中に、先人たちが後世の私たちに伝えようとしてきたものを感じることが出来ます。つまり太極拳は伝統文化と言えるのです。
一方、様々な伝統文化が、近世の政治と経済の激しい変革や、多様な現代思想の影響のために大きな影響を受けています。陳氏太極拳もまたその例外ではありません。このような状況の下で、私は今、伝統文化である伝統太極拳伝承者の一人として、この伝統太極拳を保存し普及する使命を強く感じています。今や太極拳は中国の伝統文化にとどまらず、国境を越え人種や民族を超え世界文化となっています。また日本と中国の間においては日中友好の大きな架け橋ともなっています。
私は、各国の伝統武術や伝統文化が、国境、人種、民族を超え、大きな輪を作り、共存共生、互いに協力、支援し合い、共に発展する道を選択すべきだと考えています。陳氏太極拳協会はこの目的を実現するために設立されました。これからも日本や中国だけでなく、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ、ドイツ、スウェ-デン、オランダなど、世界各国の健康と平和を愛する人々と集い、コミュニケーションや国際交流活動を行っていきたいと考えております。
より多くの方々が、陳氏太極拳のリラクゼーションの運動と精神理論を楽しむとともに、健康と平和のために貢献出来ればと願っております。
陳氏太極拳協会主席・陳家溝陳氏太極拳
陳氏第二十世 陳沛山(Chen Peishan)